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★尺骨突き上げ症候群

尺骨突き上げ症候群とは?

前腕(肘から手首まで)には橈骨と尺骨の2本の骨があります。

  通常は橈骨と尺骨は手関節の部位で同じ長さになっていますが、生まれつき、あるいは外傷で橈骨と尺骨の長さが違う人がいます。

✓尺骨が橈骨に比べて長い場合、手首を動かすと手首の骨や軟骨が尺骨とぶつかり、痛みがでたり、動きが悪くなります。

  この状態を「尺骨突き上げ症候群」といいます。

治療は装具などで安静にすると痛みが軽減します。装具治療でも改善しない場合は尺骨を短縮する手術を行うこともあります。

✔病態

橈骨よりも尺骨が長い場合、手関節を動かすときに尺骨が

 TFCC(三角繊維軟骨複合体)手根骨(特に月状骨)を圧迫し、

痛みや不安定性が出現します。

✔症状

1. 運動痛:手首を動かすと手関節尺側(小指側)に痛みがでます。

2. 可動域制限:痛みのために手関節の動く範囲が狭くなってきます。

3. 握力低下:手を強く握ると痛みが出ます。そのため握力低下も生じます。

✔原因

1. 生まれつき:生まれつき尺骨が長い人がいます。尺骨が長くても無症状の人もいますが、年齢による関節軟骨の変性や軽微な外傷などで手関節痛が発生する場合もあります。

 

2. 外傷:骨折で橈骨が短縮した場合も尺骨突き上げ症候群が発生する場合があります。

✔診断:

1. 自覚症状(手関節尺側の痛み、特に尺屈、背屈で痛みが出やすい)

 

2. 誘発テストが陽性(TFCCの障害を見ています)

 手関節尺屈テスト:回内外中間位で手関節を小指側に曲げる

 手関節尺屈回外テスト:手関節を小指側に曲げて前腕を回外する

 

3. 画像所見

 X線:尺骨が橈骨よりも長い月状骨の骨融解像。

 MRI:三角繊維軟骨複合体(TFCC)損傷

 

✔治療:

1. 手関節の安静:(必要に応じて手関節装具を装着)で炎症を抑えるように努めます。

 

2. 注射:痛みが強い場合はステロイド剤の注射を行います。

 

3. 手術:安静や注射でも症状が強ければ、尺骨を短縮する手術を行います。手術は尺骨の手首側で骨を切り、数mm短縮してプレートで固定します。

治療症例

★非外傷例

​手関節のレントゲン写真です。

尺骨が橈骨よりも約3mm長い。

上図の四角で囲まれた部分の拡大図

月状骨内に嚢腫形成(青〇内)。

尺骨が橈骨よりも約3mm長い(赤矢印)。

MRI

月状骨内に嚢腫様像(青〇内)

三角繊維軟骨の損傷(赤矢印)

 

★外傷例  橈骨骨折後に発症

​橈骨遠位端骨折の変形治癒が原因で発症した尺骨突き上げ症候群

約7mm尺骨が橈骨よりも長い

尺骨を3mm短縮し、手関節痛が著明に軽減

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