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肘部管症候群  小指がしびれる

肘部管症候群のまとめ

 「肘の内側で尺骨神経が圧迫されて起こる神経麻痺です。」      

症状:シビレ(小指や薬指)と筋力低下

   進行すると手の筋肉が痩せ、箸が使えなくなる。

原因:一番多い原因は変形性肘関節症です。

   神経の亜脱臼、肘外傷、腫瘤による圧迫など

治療:多くの場合 手術が必要です。

    「早期の手術でしびれや痛みから開放されよう

手術後の回復:術後の回復に時間がかかることがおおい。

   治りにくい状態

    1、糖尿病患者さん

    2、発症から長期間経過

    3、進行例

 

    → 早く! 早く! 治療を開始しましょう

​類似疾患:ギヨン管症候群

以下は詳細説明です

尺骨神経とは? 腕の三大神経のひとつ

✔腕、手の主な神経:①正中神経、②橈骨神経、③尺骨神経

尺骨神経の走行:上腕の内側を下り、肘の高さで上腕骨内側上顆の後ろを通り前腕や手で運動神経と感覚神経の枝を出し、筋肉と感覚を支配します。

尺骨神経が支配している筋肉と知覚領域

尺骨神経(支配している筋肉と知覚)を知ることで、病気が判る

★尺骨神経の運動枝★

・尺側手根屈筋(ダーツを投げる方向に手首をまげる筋肉です)

・深指屈筋(尺側部:小指、薬指の第一関節を曲げる筋肉です)

・短掌筋(手掌腱膜尺側縁と小指球尺側縁の皮膚を繋ぐ筋肉で

       手掌腱膜をピンと張る作用

・小指外転筋(小指を横に開く)、

・短小指屈筋(小指のMP関節を屈曲する)

・小指対立筋(小指を親指側に動かす)

・第3・4虫様筋

・掌側・背側骨間筋

・母指内転筋、短母指屈筋(深頭)

尺骨神経の感覚枝

・肘関節包、手根関節包、中手指節関節包、

・前腕遠位尺側の掌側と背側、環指尺側・小指の掌側、中指尺側・環指・小指の背側

症状:1)しびれや痛み、2)筋力低下、3)手の変形

1)しびれや痛み下図の赤い部分がしびれます。

・掌側は小指や薬指半分(小指側)がしびれ、

・背側は中指半分(小指側)・環指・小指がしびれます。

 

 #神経の障害の程度により小指だけがしびれたり薬指と小指の両方がしびれたりします。

2)筋力低下:筋肉の麻痺も出現します。症状が進むと手の筋肉がやせて、手に力が入りにくくなり握力が低下し、箸が使いにくくなります。

同一人物です

右手は正常です

​左手は肘部管症候群のため

筋肉が痩せている(赤矢印)ことがわかります

3)手の変形:症状が進むと手が変形(鷲手変形)してきます。

肘部管症候群が進行すると

 

手が変形(鷲手変形)します。

検査法

フローマン徴候(Froment sign)

 両方の母指と示指で紙を挟み互いに紙を引っ張るときに患側の母指の第一関節が曲がると陽性です。

 

 これは尺骨神経麻痺で弱くなった母指内転筋の動きを代償するために長母指屈筋腱を使い、母指IP関節が屈曲するものです。

日本整形外科学会 ホームページより

​★原因:肘の内側で神経が圧迫されて症状がでます。

神経が圧迫される原因

 1)変形性肘関節症、2)尺骨神経の亜脱臼、3)肘の変形(内反肘、外反肘)、4)ガングリオンなどの腫瘤による圧迫、5)外傷後の肘拘縮 、6)肘を長時間まげる などです。

1)変形性関節症

 一番多い原因は変形性肘関節症です。変形性肘関節症では肘の骨がいたるところで増殖します。

 

 骨増殖が肘部管内に発生すると、骨が尺骨神経を強く圧迫し肘部管症候群が発症します。

 

 変形性肘関節症は農業・林業・建設業・スポーツなど、肘をたくさん使うことによって発生します。

赤丸で囲んだ部分が肘部管で尺骨神経は圧迫されていません

骨棘が増殖し、肘部管が狭くなっています。神経が圧迫されて変形しています。

2)尺骨神経(亜)脱臼

 肘を曲げると尺骨神経が骨の出っ張りを乗り上げて亜脱臼し、肘を伸展すると尺骨神経は整復されることがあります。

 

 脱臼と整復の繰り返しで尺骨神経が骨と擦れ神経症状がでます。

3)肘変形

 外傷後に肘が内側にまがった状態を内反肘変形といい、肘が外側に曲がったものを外反肘変形と言います。

 内反肘変形、外反肘変形の両方とも尺骨神経が圧迫され

  肘部管症候群が発生する可能性あり。

4)腫瘤による圧迫

 ガングリオンや腫瘍等による圧迫もあります。

 

 肘部管内にガングリオン等が発生すると尺骨神経を圧迫します。

5)外傷後拘縮

 肘の外傷(肘の脱臼や骨折など)で肘部管内が腫れて神経の通り道が狭くなることがあります。

注意:リハビリでしびれが悪化 する場合があります

 肘の外傷後に肘拘縮(肘関節が固まり動きが悪くなること)が起ここることがあります。こういった場合神経の通り道が狭くなっていることがあり、リハビリを行うと尺骨神経をさらに圧迫し肘部管症候群が進むことがあります。

 

 神経の通り道が狭くなっている場合は、肘を曲げると肘内側に強い痛みや小指しびれが出現します。

 外傷後にリハビリを行っても肘の内側が痛く、肘が曲がらない場合は神経が圧迫されているかもしれません。

 

 意外と多い原因です。

★肘の脱臼や骨折後に肘の曲がりが改善しないあなた!!

  それは神経が圧迫されているからかもしれません。

6)長時間の肘屈曲

 仕事で長時間肘を曲げていたり、肘を曲げて寝る癖のある方も神経の圧迫が強くなります。

 肘を曲げると上腕骨内側上顆の後ろで尺骨神経に緊張がかかり、この部位で神経が圧迫されるからです。

★治療

保存治療:軽症の場合は安静や投薬で症状が軽減することがあります。

・安静:起床時に小指がしびれているばあいは、肘を伸ばしたままバスタオル等を腕に巻いて寝ると、症状が緩和することがあります。これは肘の屈曲で神経が圧迫されないようにする方法です。

・投薬:しびれやビリビリした痛みなどの神経障害性疼痛がつらい場合はプレガバリン(リリカ🄬)が有効なことがあります。プレガバリンの副作用として比較的高頻度に現れるのは、眠気やふらつきです。運転前の服用には注意が必要です。また高齢者の方は転倒リスクが高まる恐れがあります。

手術治療症状が進んだ場合は手術が必要です。

 

#早めの手術が重要です

 早めに手術を行うと回復が期待できます。

 手術は局所麻酔、伝達麻酔あるいは全身麻酔でおこないます。

 手術時間は30-40分位です。

 

神経麻痺は進行すると回復しません!!

 神経は障害の期間や障害(圧迫)の強さによって回復までに大きな差が出ます。

 障害が強い場合は症状が回復しないこともあります。

 神経麻痺は早期発見・早期治療が何よりも重要です。

日本手外科学会のパンフレットから

尺骨神経の圧迫を除去し、必要に応じて神経を前方に移動します。

手術後の腕の姿勢

尺骨神経前方移動術を行った後は 肘を曲げると神経にかかる圧力が減り、肘を伸ばすと神経に若干圧力が増えることがあります(手術前の肘部管症候群の逆の症状)。

したがって、保存治療の一つである伸展位保持は手術後は不要です。

自己診断法

特有の症状があるか?

 小指と薬指のしびれ、握力低下

 

ティネルサインがあるか?

 肘の内側にとび出ている骨(上腕骨内側上顆)の後ろを反対の手の指先で軽くたたくと小指に電気が走る(ティネルサイン)場合を陽性とします。

 

特有の症状とティネルサインがあると 肘部管症候群が疑われます。

肘の内側で尺骨神経が圧迫されます。

そこを指でたたくと、小指や薬指がビリビリします。

日本手外科学会のパンフレットから

​疾患の写真と説明
40代女性 小児期に骨折を受傷
上腕骨外側顆骨折後偽関節に発症した尺骨神経麻痺

5歳の時の肘外傷(上腕骨外側上顆骨折)

整骨院で治療しましたが、

​骨がついていません。(

肘が外側に「くの字」に変形

術前の写真です。

 

左手背の筋肉が萎縮(

小指と薬指が完全に伸びません

FCU fibrous bandでの圧迫はあまり強くなかったが、神経は周囲との癒着が強く、さらに炎症が強い印象でした。

尺骨神経を内側上顆の前方に移動する途中です。

尺骨神経が偽神経腫(神経の一部が棍棒状に膨らんでいます)を形成しているのが判ります。

手術後1年の写真です。

しびれや筋力は大きな変化はありませんが小指が伸ばしやすくなりました。

進行した神経麻痺は回復に長期間を要します。

早期に治療することが重要です

40歳男性 小児期に肘の骨折を受傷

数年前から手のしびれと筋委縮に気が付いていた。
徐々に筋委縮が進行。
投球時に野球のボールがすっぽ抜けるようになった。

右手背の筋肉が萎縮し、へこんでいます。

これは神経麻痺が進んでいることを示しています。

手術所見です。

神経は肘を屈曲すると上腕三頭筋に後方から前方に押され、内側上顆に乗り上げていました。

 

写真と絵で示したように、尺骨神経は長期間の圧迫により神経が腫れて

「偽神経腫」を形成していました。

神経を移動し圧迫されにくい位置に固定しました。

50歳代男性、 1‐2か月前から急に小指と薬指の痛みとしびれが出現

レントゲン 肘関節正面像

関節の隙間が無くなり、骨棘も増殖しています

手術所見

尺骨神経をガングリオンが強く圧迫していました。

術後数日で術前にあった環指小指の痛みは改善してきました。

神経の圧迫が強かったために、シビレが改善するにはさらに長い期間を要します。

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