★グロムス腫瘍 ⚡理解されない激しい痛み⚡
手術で劇的回復😊
グロムス腫瘍とは? トテモ痛い軟部腫瘍
好発部位:指先や爪周囲、とくに「爪の根元が痛い」ことが多い
全身どこでも可能性あり
症状:圧痛、自発痛、寒冷時痛など痛みが主な症状です。
診断:腫瘍は皮膚や爪の下に青く透けて見えることがあります。
痛い場所をピンなどで叩くと飛び上がるほどの痛みが出現します。
★★★ 病院を受診しても原因不明の痛み、あるいは精神的な痛みと
言われ診断がつかないことが多い疾患です。 ★★★
治療:手術が必要。腫瘍をとると劇的に痛みがなくなります。
以下詳細
グロムス(小)体
グロムス(小)体は動静脈吻合に存在する器官の一つです。指尖部に多く、非常に神経に富んでいます.グロムス腫瘍はグロムス(小)体の過形成で起こる、稀な軟部腫瘍です(手部腫瘍の約 1%)。多くは単発性ですが10%弱が多発性です。多発性の場合は指以外の四肢に生じやすい傾向があります。
症状
1)Carroll の三徴候:圧痛、自発痛、寒冷時痛が有名です。
2)好発部位:指先の痛み、特に爪の下や爪周囲に痛みが出ることが多い。
3)夜間痛:夜間あるいは起床時に痛みが強く出ることがあります。
4)寒冷痛:手を冷水に入れると痛みが増強します。
5)Love’s pin sign:ピンで患部を押すと飛び上がるほど強い痛みがでます。
原因
原因は不明です。
診断
特徴的な症状と所見 と 画像検査で診断します。
★圧痛、自発痛、寒冷時痛(Carroll の三徴候)の陽性。
特に特徴的なのは圧痛(Love’s pin sign)です。
★青い腫瘤:皮膚や爪の下に青く腫瘍が透けて見えることがあります。
★画像診断
1.X線:骨の変形。腫瘍で圧迫され骨が溶けてへこむことがあります。
2.MRI:T2で高輝度。腫瘍が小さい場合は描出されない。
ダイナミック造影では早期から著明に造影されます。
3.エコー:エコーで腫瘍が認められることがあります。
白井ら1)は、MRI で腫瘍が同定できたものは 73%,超 音波では 50%と述べています。
治療
有効な治療は手術のみです。
・手術で腫瘍をとるとケロリと治ります。
・手術法
局所麻酔(希望者は全身麻酔) 20-30分程度の痛くない手術です。
局所麻酔手術は入院は不要です。
遠方の方やご事情のある方、全身麻酔では入院手術を行います。
この疾患は手術で劇的に治るので手術を強く勧めます。
手術後には痛みのない生活が待っています。
自己診断法
1. 爪およびその周囲の痛い場所に少しだけ青みがかることが多い。
2. 痛い場所を箸でつんつんたたくと飛び上がるほど痛い。
3. 冷水をかけると痛みが強くなる。
著者が行った手術例
★40歳代 女性 10年来の指の疼痛。
✓Carroll の三徴候:圧痛、自発痛、寒冷時痛が陽性
✓青い点:爪の根元に青い点が見える。レントゲンで骨がえぐれて変形している。
✓治療:手術で腫瘍を切除すると、翌日には術前の痛みがすっかりなくなりました。
爪の根本の左側に、かすかに青い点とその部分がわずかに膨らんでいる
レントゲン
末節骨が腫瘍で圧迫されてえぐれている
★30歳代女性 右母指にできたグロムス腫瘍
✓5年前からの痛み
✓診断困難:3か所病院を受診したが診断つかず
✓精神安定剤の処方:他院で気のせいだといわれ精神安定剤を服用。
✓治療:手術を行い腫瘍を摘出。直後から疼痛が消失しました。
右母指爪基部が青みかかりやや膨らんでいる。この部位を押すと大変強い疼痛を訴えました。
エコー:末節骨背側がややえぐれており、えぐれた骨の背側に高輝度の陰影を認めます。
レントゲン側面像
末節骨背側が若干えぐれている。
MRI:T2撮影で末節骨背側に高輝度の腫瘤を認めます(赤点で囲んだ部位)。
★30歳代 女性
✓罹病歴:10年来の疼痛に悩まされておりました。
✓診断:エコーと特徴的な所見からグロムス腫瘍と判断
✓治療:手術を行い疼痛は消失
中指、環指、小指の3か所に発生したグロムス腫瘍(黒点で囲んでいる部位に強い圧痛を認めました。)
小指の爪の下に大きな腫瘍を認めました
環指中節骨に接して腫瘍がありました。
30歳代 女性
✓病歴:2年来の人差し指の痛み。徐々に痛いが増強してきました。
✓画像:エコー、MRIともに腫瘤が描出されていました。
✓治療:局所麻酔下に摘出。
左図:MRI
赤点で囲んでいる部位が腫瘤です
右図:術前
青点で囲んでいる部位に
腫瘤が存在します
術中写真
左図:爪甲を反転すると爪母下に
盛りあがりが判ります
右図:爪母を切離し内部から腫瘤を
摘出したところです
この後、爪母を縫合し爪甲を戻してテープで固定しました。
40歳代女性
10年以上前から右中指に痛みが出現
特に寒い冬は耐えがたいほどの痛みでした。
腫瘍は中央から側方に及ぶ大きなもので通常の方法ではとり切れないと考え
爪甲と爪床を一塊にしてはがし、腫瘍を切除しました(緑で囲んでいるのがグロムス腫瘍です)。
手術の傷がいえる頃には痛みがない生活に戻ることができます。
メリット:CM関節を残すので関節が動きます。
将来、痛みが強くなった場合は他の治療法を選択できます。
デメリット:骨癒合までに平均2-3か月を要し、その間力仕事ができない。
痛みが軽減するまでに数か月を要する。
30歳女性(2021.4.26手術)
10年くらい前から右中指に痛みがありました。
以前、近くの整形外科を受診し大きくなったらとりましょうと言われ痛みを我慢していました。
最近痛みが強くなり当科を受診し、手術を行いました。
赤点で囲んだ部位が痛みが強い場所
爪をはがすと爪母(これから爪になる組織)が膨らんでいました
爪母を縦に切り
大きなグロムス腫瘍を切除しました。
爪母を非常に細い糸で縫合し
爪甲を戻して終了です。
★長年、悩まされていた 痛みから解放 されます。
40代女性
10年以上前に手術を受けました。
その後、再発し寒冷時期になると痛みが強く日常生活にも支障をきたしています
再発例は比較的珍しいですが、稀に外来にいらっしゃいます
参考文献
1)白井久也ら、日手会誌(J Jpn Soc Surg Hand),第 32 巻 第 3 号 361-364,2015
キーワード:夜間痛、爪、冷水、指、指の痛み、手の痛み、圧痛、押すと痛い、ぶつかると痛い、手術、腫瘍切除、爪下、原因不明の痛み