動物咬傷
動物咬傷とはどんなケガ? まとめ
頻度
咬まれる頻度は イヌ:ネコ:他=8:1:1で圧倒的にイヌが多い
感染率は ネコが高くイヌの約10倍です。
症状
一旦感染すると時間とともに痛みが強くなり、腫れもひどくなります。さらに感染が続けば組織が壊死し破壊されます。
治療
洗浄・排液と抗菌薬投与を行います。
抗菌薬は内服はアモキシリン-クラブラン酸(オーグメンチン🄬)、点滴はアンピシリン‐スルバクタム(ユナシン-s🄬)などを投与します。
★破傷風の治療も重要です。
以下詳細
✓咬傷の特徴
動物にかまれてけがをする頻度は犬が8割、猫が1割です。
動物の牙はとがっているため強く咬まれると口の中の菌が傷深く入り込みます。
牙の入り口が狭く深層にたまった血液やリンパ液などが外に排出されないので感染しやすい環境が整います。
特にネコの牙は細く鋭いため、菌が深くまで運ばれてより高い確率で感染症を引き起こします。
✓症状
咬まれた直後の症状は咬まれた部位とその周囲の痛みと腫れです。
その後、感染が起これば強い痛みや腫脹、皮膚の発赤も出現します。
感染が続けば、周囲の組織が破壊されます。
特に手は腱、骨、神経等の重要な臓器が密集しており、感染によって機能障害が残りやすい部位です。

✓治療:洗浄・排液と抗菌薬投与を行います。
①菌の採取と同定
洗浄前に創部の細菌検査を行い菌の同定を行います(菌の同定には数日から数週間かかります)。すでに抗菌薬が投与されている場合は菌の同定が困難な場合が多い。
②創の洗浄と排液 膿が貯まらなくすることが一番重要!!
創内を洗い、内部に浸出液がたまらないような処置(排液チューブ、ナイロン糸等を創内に留置)をして排液に努めます。
③抗菌薬の投与
動物口腔内の多種の菌に有効な薬(内服はアモキシシリン-クラブラン酸(オーグメンチン🄬)、点滴はアンピシリン‐スルバクタム(ユナシンs🄬)など)を投与します。
④破傷風の治療
症例に応じて、抗破傷風免疫ヒトグロブリン投与とワクチン(トキソイド)追加接種を行います。


17歳 女性 s・s 動物咬傷


受傷後約5日目の右示指
手術所見
感染性肉芽が腱鞘内に充満していた


術後1年 感染は再発しておらず 可動域も良好であった
イヌ、ネコ咬傷で問題になる菌と抗菌薬について
イヌ、ネコ咬傷の菌
Pasteurella multocida 、Staphylococcus aureus 、口腔内嫌気性菌が多い。
混合感染を起こす。
Pasteurella multocida は第一世代セフェム系が無効
抗菌薬の選択
<内服>
#感染兆候がない場合
アモキシシリン・クラブラン酸(オーグ メンチン🄬) 1錠✖3/日 3-5日間
#軽度の感染兆候がある場合
オーグメンチン🄬+サワシリン🄬 各1錠✖4 /日
#ペニシリンアレルギーがある場合は
クリンダマイシン(ダラシン🄬)300mg✖4/日(6時間毎)
+ シプロキサシン(シプロキサン🄬)200mg 2T✖2/日(1日800mg)
<点滴>
#感染兆候が強い場合は入院の上点滴投与する。
アンピシリン・スルバクタム(ユナシンs🄬)1.5~3g ✖4(6時間毎)
★オーグメンチンとサワシリンを同時に処方する理由
オーグメンチン🄬はアモキシシリン(=サワシリン🄬)とクラブラン酸Kの合剤です。オーグメンチン🄬1錠ではアモキシシリン(=サワシリン🄬)が不足ですが2錠ではクラブラン酸kが多くなり下痢しやすい。そこでサワシリン🄬を追加して下痢を予防しながら抗菌作用を強めているのです。
★破傷風について
破傷風とは破傷風菌に感染し発症する感染症です。
破傷風菌は土の中に存在し、傷口から体内に侵入します。
屋外での外傷や動物に咬まれるなどのケガで破傷風菌が体内に入り込み発症します。
潜伏期間:主に3~21日(最長178日の報告があります)。
初期症状
・顔が引きつる、・口が開かない、・物が呑み込めない
進行すると
・呼吸困難、・後弓反張(後ろにのけぞった状態)になり、ひどい場合は窒息死することがあります(致死率:約30%)。
治療は初期症状のうちに病院を受診することが重要です。
予防は破傷風ワクチンを定期的に注射すると予防が可能です。