★デュプイトラン拘縮
要 点
デュピュイトラン拘縮とは?
✔指が伸びなくなる疾患です。
✔掌(てのひら)に硬いコブ(結節)やスジ(索状物)などが発生し、引きつれて徐々に指が伸びなくなる病気です。
✔多くの場合痛みはありません。
✔進行のスピードは人により異なります。日常生活動作で不自由を感じた場合は治療が必要です。
✔治療は注射で結節や索状物を溶かす方法と、手術で結節や索状物を切除する方法があります。症状が進むと注射では対応ができませんので早めの対応が必要です。
✔クラーク病院 肩肘手外来では注射治療(ザイヤフレックス®)を第一選択としています。


以下、詳しく説明
✔デュピュイトラン拘縮(Dupuytren contracture)はGuillaume Dupuytren男爵が長期にわたり研究し、初めて手術を行ったといわれている疾患です。現在はデュピュイトラン病(Dupuitoren disease)と呼ばれることが多くなってきています。必ずしも手、指が拘縮にならない場合もあるため「拘縮」という言葉から「病」に変わりつつあります。
✔病態:手掌腱膜において線維芽細胞が筋線維芽細胞に変化し結節を形成します。その後筋線維芽細胞などにより産生されたコラーゲンが大量に沈着し、結節お よび拘縮索が形成されます。進行に伴い、拘縮索が短縮し指が屈曲拘縮して伸展ができなくなります。拘縮索のコラーゲンは正常腱膜に比べてtype Ⅲコラーゲンが多い特徴があります。
デュピュイトラン拘縮に関与する靭帯や腱膜は図1.の如くCENTRAL CORD, SPIRAL CORD(このCORDは指神経を巻き込むことが多く、手術の際に神経を損傷しないよう十分な注意が必要である。), NATATORY CORD, LATERAL CORD, GRAYSON'S LIGAMENTさらにはCLELAND'S LIGAMENTの関与も指摘されている。
✔臨床病期:
◇臨床症状による分類
①Meyerding分類
Grade0 皮膚陥凹又は硬結あり、屈曲拘縮なし
Grade1 一指のみの屈曲拘縮
Grade2 二指以上の屈曲拘縮、一指の屈曲角の総和は60度以下
Grade3 二指以上の屈曲拘縮、少なくとも一指に60度以上の屈曲拘縮あり
Grade4 全指に屈曲拘縮あり(多少にかかわらず)
Meyerding HW:Dupuytren's contracture.Arch Surg 32:320-323,1936.
②Rayan 分類(早期、中期、後期)
Rayan GM. Dupuytren disease: Anatomy, pathology, presentation, and treatment. J Bone Joint Surg Am 2007; 89 (1): 189-98.
◇病理組織像による分類
①Luck分類(増殖期、退行期、残余期)
Luck JV. Dupuytren's contracture; a new concept of the pathogenesis correlated with surgical management. J Bone Joint Surg Am 1959; 41(4): 635-64.
✔症状:掌に硬い結節や索状物が発生し、それらが引きつれて短縮し、徐々に指が伸びなくなります。自分の力でも伸びないばかりか他人が伸ばそうとしても索状物が突っ張って指は伸びません。曲げることは可能です。多くの場合、痛みはありませんがマレに圧痛や結節痛を訴える方がいます。
✔合併症状:足底の足底線維腫症、指のknuckle pad、陰茎のペイロニー病を合併することがあります。
✔原因:不明です。危険因子としては糖尿病、外傷、遺伝、飲酒などがあげられています。
✔治療:
①注射:注射で硬い索状物を溶かす方法があります。症例によっては1回の注射でほぼ治癒する大変有効な方法です(図2)。
ただし、この注射液を誤った部位に注入すると指を曲げる腱が切れるなど重篤な合併症が発生する可能性があり、手の解剖の理解と正確な注射手技が必要です。そのため、この注射は手の外科認定医にのみ治療が許可されています。
②手術:病状が進むと注射では対応できないため手術でコブや索状物を除去し指を伸ばします。
③装具:この疾患に対して装具は非常に重要な治療です。
注射後あるいは手術後に夜間装具を装着して再び指が曲がってこないように矯正位を保つようにします。
✔再発例、治療したが改善しなかった場合
注射治療後に再発した場合は再度、注射治療か手術治療が可能です。
手術治療後に再発した場合は注射治療は行わずに手術治療を行うことが一般的です。
治療を受けたが改善しなかった場合は改善しなかった原因を探し、治療を進めていきます。
この疾患は手術後のリハビリと装具治療が大変重要です。
図1. デュピュイトラン拘縮に関与する靭帯、腱膜等の詳細

注射治療 ザイヤフレックス使用例
症例1 60歳代男性、数年前から急に小指が伸びなくなりました。


注射前
小指の皮下に索状物(ひものようなもの)が認められます。これ以上小指は伸びません。


注射後1か月
ザイヤフレックスを注射後1か月で小指の索状物が消失し、小指が伸びています。
ザイヤフレックス🄬:日本での発売元の旭化成ファーマのホームページでも詳しい情報が得られます。
症例2 70代男性 左環指・小指の伸展制限

左環指PIP関節の伸展制限が強く、ザイヤフレックス注射療法を行いました

翌日局所麻酔下に伸展処置を行いました。その際皮膚が破れて脂肪組織がみえます。(写真を加工)
注射前の写真を見ますと、PIP関節部で皮膚と索状物が固着していることがわかります。この部位の皮膚が裂けました。皮膚が切れるくらいまで伸展処置を行わなければ索状物を完全に切ることが難しいケースです。


注射後2か月 創は1.5ヶ月で治癒し、可動域制限はほぼ認められません
手術例
症例3 再手術例:他院で初回手術を行ったが小指だけ改善せず

他院手術後1年
第二関節(PIP関節)の伸展が-75°であった。

再手術後3か月
手術の効果もあるが、装具を使用して伸展が改善した。
使用した装具は夜間伸展位固定用のアルフェンスシーネ(アルミ副子)である。
簡便で安価な素材でも非常に有効であった。
図3.様々な形態のデュピュイトラン拘縮

索状物が環指PIP関節に達している。第2関節(PIP)が進展しない

環指、小指に索状物とこぶ状物が認められます。

小指とその手掌部にこぶ状の腫瘤を認めます。

両側発症例です。両側に発症するのは約半数と言われております。

