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変形性肘関節症  

変形性肘関節症とは?

 使いすぎ、ケガ、炎症などで肘関節が壊れたり、変形する病気

症状

  肘の動きが悪くなる(伸びにくい、曲がりにくい)

 進行すると洗顔や食事などの動作が困難になります

 肘を動かした時の痛み

  肘部管症候群の発症

 薬指や小指のしびれ、握力低下、細かな動作が困難になる

 

治療

  ①安静

 安静で痛みが改善することがあります

  ②注射

 注射で肘の炎症が軽減すると痛みが改善します

 さらに可動域が若干改善することもあります

  ③手術

 安静や注射でも症状が改善しない場合は手術を行います

 動きの妨げている骨棘を削り、縮んだ関節包を切離します 

 変形が大変強い場合は人工肘関節置換術を行います

 

​最大屈曲時

最大伸展時

​以下 詳しく説明しております

★原因

★一次性変形性関節症

 肘に繰り返しストレスがかかり発生するものです。野球のピッチャー、砲丸投げ、やり投げ、テニス、バドミントン等物を投げるスポーツ選手や、土木作業、農作業、漁業など肘に負担の多い仕事をしている方に起こります。

★二次性変形性関節症

 肘の外傷後に発生するものや関節炎(痛風、感染、結核)などが原因で起こる疾患です。小児期に生しやすい離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)が治癒しなければ高率に変形性関節症に移行します。

★病態

関節軟骨の老化、ストレスで関節軟骨基質のプロテオグリカンに解重合がおこります。プロテオグリカンは軟骨の膠原繊維網を結合させているので、プロテオグリカンが解重合すると軟骨の粘弾性が低下、軟骨表面の耐摩耗性も低下し軟骨の損傷が進みやすくなります。この繰り返しで関節軟骨が損傷され、変形性関節症へと進みます。軟骨変性が進むと軟骨下骨にストレスがかかり反応性に軟骨下骨の骨硬化が生じます。また靭帯付着部や腱付着部にもストレスが起こり骨棘が形成されます。下の図で骨棘が作られやすい部位を示します。

​日本整形外科学会ホームページより

症状

#可動域制限

 多くの患者さんはある日、肘が伸びないことに気が付いて来院されます。

 

 運動制限はまず伸展(伸ばすこと)が障害されその後、屈曲(曲げること)が障害されてきます。

 

 運動制限は肘を曲げるときや伸ばすときに関節内で増殖した骨棘同士がぶつかることで発生します。

 

 長期間制限が続くと関節周囲の靭帯や関節の袋が縮み運動制限の原因の一つになります。

 

 また関節遊離体が関節内で嵌頓(はまり込むこと)し、ロッキング症状(肘が伸びも曲がりもしない状態)がでてから来院する場合もあります。

下の図は長期間変形性肘関節症に悩まされてきた方です。

肘の動きが悪く、肘の運動痛を訴えていました。

肘関節内に骨棘が大量に増殖しています

手術前:伸展-40° 屈曲115°と可動域も不良です。

#運動痛

 肘の屈曲伸展や投球動作で疼痛が生じます。

 

 レントゲン上病状が進んでいても、肘に痛みを感じない場合もあり、痛みと画像所見は必ずも一致しません。

 

 病状が進むと安静時痛を伴うこともあります。

#関節液貯留

 肘を酷使した後など、関節内の炎症が強くなると関節液がたまります。

 

 膝関節によくみられる「関節に水が溜まる」のと同じ状態です。

肘部管症候群

 ①変形した肘の骨に尺骨神経が圧迫されて麻痺が生じる場合

 ②術後、肘の屈曲改善に伴い尺骨神経が圧迫されて発症する場合

 

 小指全体と薬指の半分がしびれて、握力が減り、箸が使いずらくなります。

 

 進行すると手の甲の筋肉が痩せて手が変形してきます。

 詳しくは こちら-

画像所見

レントゲン、CT:

関節のすきま(関節劽隙)が狭くなります

  これは関節軟骨が減ったことを意味します

 

骨棘形成や軟骨下骨の骨硬化が見られます 

  骨棘は鈎状突起、肘頭、鈎状突起窩、肘頭窩、橈骨窩、腕尺関節に多い

  骨同士がぶつかる所と靭帯や腱で引っ張られる所に骨棘が形成される

​図1、正常肘関節 X線側面像

​関節の配列は正常で、関節裂隙は保たれ、骨棘形成もない

図2、変形関節症側面 CT画像

関節裂隙が一部で狭小化し、骨棘が大量に形成されている

図3、骨棘を赤線で囲みました

骨棘が肘の屈曲および伸展を妨げて可動域を悪化させます

図4、重度の変形性肘関節症

​巨大な骨棘が外側に認められ、内側にも骨棘があります(赤色

関節裂隙が狭くなり軟骨下骨が骨硬化しています(黄色

★治療

★痛みに対する治療

 ・安静:肘の使用を控えると炎症が沈静化し痛みが軽減します。

 ・注射:安静でも痛みが強い場合はステロイド剤の注射を行います。

 ・手術:安静や注射でも改善しない場合は手術を行います。

★肘の可動域改善の治療

 「肘の動きを改善するには手術が必要です。」

★手術について 耐え難い肘の痛み、日常生活に支障をきたすほど動きが悪い場合、ロッキング症状を繰り返す場合、肘部管症候群を合併している場合は手術を行います。

 手術方法

 ①関節形成術:骨棘と関節包、靭帯の切除

  図3の骨棘を徹底的に切除し、肘周囲の関節包や靭帯を切除します。

  a, 軽~中症例:内視鏡手術

         ロッキング症状がある場合は内視鏡で遊離体を摘出

  b, 重症例      :皮膚、関節包を切開して行います。

               重症例は内視鏡手術では良好な結果が得られません。

 人工関節置換術:関節形成術でもよくならない場合は

   人工肘関節置換術を行います

 ③尺骨神経前方移動術:肘部管症候群を合併してる場合に行います。

✓骨棘切除手術後の肘部管症候群

 骨棘切除手術後に肘の屈曲が良くなると、尺骨神経の圧迫が強くなり小指の痺れや痛みがでる(肘部管症候群)ことがあります。この場合は神経の圧迫を取り除く手術を行います。

✓手術のポイント

 肘の可動域を改善する手術で重要なポイントは動きを妨げている原因を徹底的に切除することです。骨棘、関節包、靭帯(前面および後面の関節包や内側側副靭帯前斜繊維以外の内側靭帯)を徹底的に切除することで良好な動きが得られます。動きを良くする手術をうけたにもかかわらず動きが改善しないのはリハビリが不足しているか、尺骨神経が圧迫されているか、原因が取り切れていないことが考えられます。

45歳 女性。幼少期に肘の外傷でギプス治療。大人になり症状が出現。

​外傷後変形性肘関節症の患者さんです。

この患者さんの問題点は

1)関節がグラグラして物を持つことが出来ず、痛みがあること

2)肘部管症候群が発症し筋力低下と指のシビレ、痛みがあることです。

手術前

著明な変形

上腕骨顆部、特に上腕骨小頭が欠損し、上腕骨滑車も変形が著しい。

さらに橈骨頭、肘頭も変形している。

激しい動揺性

術前の症状は骨形態の破綻と靭帯不全により全方向にグラグラしてました。

手術後

人工関節

関節動揺性を軽減する目的で半拘束性の人工関節を使用しました。

上腕三頭筋腱温存

上腕三頭筋の筋力を低下させないために上腕三頭筋は切離、剝離せずに温存したまま人工関節置換術を行いました。

★人工肘関節手術後の症状と生活

 

✔痛みとグラグラが消失術後は肘の痛みとグラグラ感が消失し右手を自由に使用しています。

✔筋力良好上腕三頭筋を切らずに肘の伸展力も良好で重量物を上に持ち上げることも可能。

 

✔フラダンス現在は長年の夢だったフラダンスを行っています。

★肘部管症候群

 肘部管症候群を合併し小指の強いしびれや握力低下、細かな動作(箸が使いにくいなど)が行いにくい場合は神経の圧迫を軽減する手術を早めに受けることが必要です。

★リハビリ

 肘の可動域を改善する手術をした後はリハビリが大変重要です。リハビリは痛いと思われている方が多いですが、痛いリハビリは症状を悪化させる可能性があります。肘関節の形態と機能を熟知したリハビリスタッフが丁寧に行うと強い痛みがおこらずに可動域が徐々に改善してきます。

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