テニス肘、上腕骨外側上顆炎
慢性化したら内視鏡手術
テニス肘とは
正式名称
上腕骨外側上顆炎
テニスをやっている人に比較的多く発生するので
テニス肘の別称ができました。
病態
手首を伸ばす筋肉(短橈側手根伸筋)が肘外側の部位で
傷ついた疾患です。
原因
使いすぎと年齢に関係があるようです。
中年女性に好発します。
症状
タオルを絞ったり、物を持つと肘に強い痛みが出ます。
治療
①安静:発症初期では筋肉に負荷をかけず、安静で改善します。
②ストレッチ:損傷した筋肉の弾力性を得るために行います。
③固定:テニスエルボーバンドの装着で改善することもあります。
④注射:疼痛が強い場合は注射を行うことがあります。
注射を続けると治りにくくなる可能性があります。
⑤手術:慢性化し痛みが強い場合は手術を行います。
損傷程度に応じて手術法がわります。
★クラーク病院では内視鏡手術を行っています。

日本手外科学会 手の外科シリーズより
テニス肘の解剖と損傷部位
手首を伸ばす(反る)動作で使用する筋肉は主に長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、総指伸筋があり、このうち短橈側手根伸筋が骨についている部位で小さく切れて発症する疾患です。切れるといっても肉眼では見えない、小さな損傷です。

日本手外科学会 手の外科シリーズより
どんな人に出やすいですか?
中高年の女性に多く発症します。これはおそらく、年齢的に筋力は十分に残っているが筋肉の質が劣化し自分の筋力で障害されたものと思われます。
症状
タオルを絞る、モノを持つ、力いっぱい手を握るなどで肘の外側に痛みがでます。
治療法
1)安静
中年女性に多く、会社での仕事に加え家事仕事を行うので完全な安静はほぼ困難ですが、日常生活動作で工夫をすると症状が緩和します。発症後数か月以内であれば日常生活の工夫でほとんどの方は治癒します。安静期間は2-3か月が必要です。
★タオルを絞る場合の工夫:肘が痛い方の手首を掌屈(手のひら側に曲げる)ようにして絞ると障害されている筋肉(短橈側手根伸筋)に力が加わらず強い痛みは出ません。

痛い側の腕
タオルを絞る時の注意点
右肘が痛い場合
右手を手のひら 側に曲げてタオルを絞ると強い痛みを回避できる。
日本手外科学会 手の外科シリーズより
★モノを持つ場合:手のひらを上にして物を持つと痛みはあまり感じられません。また、手のひらを下にして持つ場合は手首を掌屈(手のひら側に曲げる)して持つと痛みがほぼ出ません。
2)ストレッチ
肘を伸ばし手を下に向けて健側(いたくないほうの)の手で
手首を手のひら側に曲げます。前腕の筋肉、腱の弾力性を増して
肘にかかる衝撃を軽減する目的です。

3)固定
テニスエルボーバンドをすることで損傷した伸筋腱にかかる衝撃を幾分緩和します。これだけで治ることはなく安静にするための補助的なものです。

日本手外科学会 手の外科シリーズより
4)注射
ステロイド注射で一定期間痛みが大幅に軽減します。
注射の方法は2種類報告されています。
✔1回注射法:痛い場所に針を1回刺しステロイドを注射します。
✔peppering法:痛い場所に針を何度も刺して損傷している腱に刺激を与える方法です。何度も刺すと痛そうですが局所麻酔薬も使いますので患者さんは痛くありません。胡椒(pepper)を振りかけるようなしぐさなのでpeppering法と呼ばれます。
注射をしても安静を守らなければ治ることはありません。注射で痛みが軽くなっている間にたくさん使うと症状が悪化します。注射を何度も繰り返すことは慎まなければなりません。注射後の安静を前提として注射を行う必要があります。

日本手外科学会 手の外科シリーズより
5)手術
安静等で改善しない場合は手術を行います。
手術は内視鏡手術で病変部を切除する方法と切開手術で断裂した腱を骨に縫着する手術があります。
クラーク病院では主に内視鏡で行います。
手術後に一定期間無理をしないなどの注意が必要です。
症例 長年肘外側痛に悩まされていた女性

T2脂肪抑制 冠状断
赤で囲んだ部分が断裂している

T2 横断像
赤で囲んだ部分が断裂している

MRIに一致して関節包と伸筋腱が断裂していた