外傷による神経損傷について(感覚神経に焦点をあてて)
・手や足の神経損傷について解説します
◇原因
◇損傷程度
◇症状
◇治療法
神経には感覚をつかさどる神経(感覚神経)と筋肉を動かす神経(運動神経)があります。今回は感覚神経損傷について解説します。
手や足にはたくさんの神経が通っており、露出部なので外傷で神経を傷つける頻度が高く外来も多数の患者さんが受診されます。
◇神経損傷の原因は様々です
神経損傷の原因で一番多いのはカッターや包丁など鋭利なもので誤って手の神経を切ることです。他には骨折時に折れた骨で傷ついたり、手足の強い打撲、注射などで誤って神経を傷つけたり、さらに動物に咬まれて神経が損傷することもあります。
◇神経の損傷程度は治療に影響する
神経の損傷程度によって治療法が変わります。
軽い損傷なら治療をしなくても改善しますが、激しい損傷や完全に切れている場合はおおくは手術が必要です。
損傷程度はわからないことが多い
カッターなどで皮膚も切れていると神経の損傷状況が直にみえるのでわかりやすいのですが、骨折や、打撲、針刺し、動物咬傷など、皮膚が切れていない場合は、神経の損傷程度が判りません。
神経の損傷程度には以下のような分類があります
③、④のように神経内で軸索(神経線維)の損傷が激しかったり、神経全体が切れていると神経は再生せず、通常手術を行います。
◇神経損傷の症状は時間の経過で変化、予測不能
神経を傷つけると手や足に強い痛みや、不快なビリビリとした痺れがおこります。
神経が傷ついた部位に物が当たると激しいしびれが起こります(これをティネルサインといいます)
時間の経過とともに断裂した部位が膨らみ軽い刺激で耐えがたい痛みになることがあります。
一方、時間とともにしびれが落ち着き症状が軽くなる場合もあります。
特に小児の場合は神経が切れていても症状を残さないことがありますが、大人の場合は徐々にしびれが強くなる傾向です。
神経損傷後、時間の経過とともに損傷部位が膨れて、軽い刺激でも強い痛みを感じるようになります
◇治療法の選択
皮膚が切れていない場合は損傷程度が判らないので治療法に迷います。
症状が軽度の場合は様子を見ますが
症状が強い場合は神経が断裂している可能性がありますので手術を行います。
手術中に神経を確認し、治療法を決定します。
◇手術治療
・受傷早期の場合
神経縫合:損傷した神経を縫合します。
神経移植;神経が欠損し直接縫合ができない場合は神経を移植し、橋渡しをします。
神経骨内埋入:損傷部位や損傷程度によっては切れた神経を骨などに埋め込みます。
神経を骨に入れ外部からの刺激を遮断します。。
・受傷後時間が経過した場合
断裂した神経は時間の経過とともに離れていきますので直接縫合が難しくなります。
神経移植あるいは骨内埋入を行います。
★多くの場合は改善しますが、残念ながら症状が残ることがあります。
◇手術のタイミング
手術のタイミングが重要です。
神経損傷があっても症状が軽い場合は自然治癒の可能性がありますので経過観察をしてよいと思います。
一方、強い痛みを我慢しているうちに激しく耐えがたい痛みになると、手術を行っても症状の改善がむずかしくなります。
症状が強い場合は早期に手術を行うことが重要です。