指伸筋腱断裂
指は露出部でいろいろな外傷を受けやすい部位です。特に指伸筋腱は皮膚の直下にあり、図画工作中にカッターで切ったり、炊事中に包丁で切るなど日常生活動作で容易に損傷を受けやすい臓器です。伸筋腱の治療は主に腱縫合術を行い、縫合した腱が切れずに癒合するまでギプスシーネ等で固定します。ただし、第1関節部は手術は行わずに保存治療を行うことが一般的です。その理由は、この部位の伸筋腱が大変薄く縫合が難しいためです。
指の伸筋腱は損傷部位でいろいろな症状が起こります。
☆2-5指の障害
第一関節(DIP関節)背側での受傷
側索が切れます。この件が切れるとマレット変形が発生します。症状が進むとスワンネック変形が発生します。
第二関節(PIP関節)背側での受傷
主に中央索が切れます。左右どちらかの側索も一緒に切れることがあります。この部位で腱が切れるとボタン穴変形が発生します。ボタン穴変形は第二関節の伸展が困難になり、第一関節が徐々に背屈変形するものです。
第三関節(MP関節)背側での受傷
切れる腱は中央索です。第1.2関節は伸展できますが第3関節が伸展できなくなります。
☆第一指(母指)の障害
第一関節(IP関節)背側での受傷
長母指伸筋腱が切れます。第一関節が伸びなくなります。
第2関節(MP関節)背側での受傷
長母指伸筋腱が切れた場合は母指の伸展力が弱くなります。
短母指伸筋腱が切れた場合はMP関節の屈曲変形を呈することがあります。
手関節部での断裂
転位の少ない橈骨遠位端骨折の合併症の一つに長母指伸筋腱断裂があります。受傷後1か月後程で長母指屈筋腱が断裂し母指の伸展ができなくなります。
上記のほかに変形性手関節症に合併した伸筋腱断裂があります。
左母指背側を電気ノコで切り受傷。
母指を伸展する腱が2本切れていました。
伸筋腱を強固に縫合しました。電気ノコで受傷すると組織の欠損が生じます。腱の欠損が3-4mm生じておりました。
レントゲンで確認しますと、基節骨の背側が1/2以上欠損しています。
変形性手関節症が原因の小指伸筋腱断裂
変形性遠位橈尺関節症で関節包が破れて骨が露出し、小指の伸筋腱が骨と擦れて腱断裂を引き起こします。
伸筋腱が切れて小指が伸展できなくなっています。