★キーンベック病(月状骨軟化症)
キーンベック病とは?
手首にある月状骨という骨が徐々に壊れて壊死し、手首の痛みや可動域制限(手首の動きが悪い)が発生する病気です。月状骨は周囲に軟骨で覆われた骨に囲まれており血流が乏しい骨です。何らかの原因でいったん壊れ始めると血流が乏しいため治りにくく、壊死しやすい特徴があります。症状は手首の痛み(主に手首の運動痛)、手首の動きが悪い(可動域制限)です。比較的若年の肉体労働者やスポーツマンに多く発症します。治療は病状の進行度合いによって選択して行います。
◆症状:手関節を動かすといたい(手関節の運動痛)。手首の動きが悪くなる(手関節の可動域制限)、時に手関節の安静時痛が出現します。
◆原因:はっきりしていません。一説にはスポーツや仕事で繰り返し手首に衝撃がかかることで月状骨に微細な骨折が起こり発症するといわれております。また、一般的に月状骨は手関節の中で圧を強く受けやすい部位にあり、いつも高い圧力にさらされています。このような状況下で橈骨と尺骨の長さのバランスが崩れることで通常よりも高い圧が月状骨にかかり発症するという説もあります。この疾患は手を酷使するスポーツ選手や手を使う仕事に従事している方に多く発症します。また、血流が乏しい骨ですのでいったん骨折が発生し適切な治療を行わなければ、骨の破壊が徐々に進行し、月状骨がつぶれて、手関節全体の骨のバランスが崩れて手首が壊れてしまいます。
◆病期分類(Lichtmanの病期分類 1977年、2010年)
レントゲン像での分類
stageⅠ 正常、(骨シンチやMRIでは異常像あり)
(自覚症状:捻挫、手関節背屈で痛みがでる)
stageⅡ 骨硬化、大きさ、形、解剖学的位置関係は正常。
(自覚症状:頑固な痛み、夜間痛)
stageⅢA 圧潰 舟状骨の位置異常なし
stageⅢB 圧潰 舟状骨掌屈回転(ring sign)
stageⅣ 二次性関節症変化
Lichtman DM, Lesley NE, Simmons SP. The classification and treatment of Kienböck’s disease: the state of the art and a look at the future. J Hand Surg Euro 2010;35(7):549-554
◆治療:この疾患は自然治癒を目指すことは困難です。早期診断早期治療が治るために重要です。
✔装具療法:病状が進んでいない場合、装具等で手首を長期間固定することで治癒が期待できます。
✔手術療法:病気が進行すると保存治療では効果がないため手術を行います。手術は橈骨を切って長さを短縮したり、月状骨の中に生きた骨(血管をつけたままの骨)を入れて月状骨の再生を促します。また、最近では創外固定機で月状骨に圧が全くかからないようにすることで治癒したとの報告もあります。
✔クラーク病院 肩肘手外科(上肢センター)では病状の進行したキーンベック病に対し、血管柄付き骨移植と創外固定機による固定を同時に行い良好な治療成績が得られております。
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レントゲン写真
月状骨がハンバーガーのように上下で分かれています、舟状骨の回転異常はごく軽度
Lichtman分類:ⅢAまたはⅢB
MRI画像では月状骨が周囲の骨と全く異なる輝度をていしています